2016〜2017年シーズン注目の新作ミュージカル3つ目は『カム・フロム・アウェイ』(Come From Away)という実話に基づく作品。3月12日に開幕を迎え、今シーズンの話題作の1つになりつつあります。トニー賞でも作品賞をはじめ複数部門でノミネートされる予感。
あらすじ
2001年の9.11同時多発テロが起きたとき、目的地に行けない38機の飛行機と6,579人の乗客・乗員をカナダのニューファンドランド島にあるガンダーという小さな町が受け入れました。『カム・フロム・アウェイ』は、惨事の中でガンダーの人々が見せた寛大さやホスピタリティー、そしてヒューマニティーに焦点を当てた “9.12” から数日間の物語です。上演時間は1時間40分で休憩なしのノンストップ。
作詞・作曲と脚本はアイリーン・サンコフ(Irene Sankoff)とデヴィッド・ハイン(David Hein)というカナダの夫妻。演出は『メンフィス』や『ザナドゥ』を手掛けたクリストファー・アシュリー(Christopher Ashley)です。曲調はケルティック、フォーク、カントリーロック。大がかりなセットはなく、椅子とテーブルや小道具を使っての再現が中心です。
ペースの速い作品で、登場人物によっては訛った英語で話すため、しっかり理解したい人は
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この作品について特筆すべきなのは、12人のキャストによるアンサンブルミュージカルだということ。明確な主演という位置づけのキャストがおらず、ソロナンバーはほとんどありません。キャスト紹介では12人全員が「代表的な役名+その他」と紹介されており、何百人にものぼる登場人物を12人で演じ分けています。登場人物がガンダーの住人と乗客・乗員なので、いわゆる “スター” ではなく 普通の人をリアルに演じられる個性豊かなキャストが集まっています。唯一ソロらしいソロがあるのはアメリカン航空のキャプテン役を演じるジェン・コレッラ(Jenn Colella)。彼女はトニー賞ノミネートもありそうです。
『カム・フロム・アウェイ』はカナダやアメリカの劇場でのトライアウトを重ね、長い道のりを経てブロードウェイにたどり着いた作品です。このタイミングでブロードウェイ公演が実現したのは偶然ですが、開幕直前にはアメリカの政権交代が起こり、この作品がブロードウェイで上演される意義はより一層大きくなったといわれています。世界がバラバラになりつつある今、たくさんの人に届けたいメッセージを持ったこの作品をブロードウェイの観客も賞賛しています。
ブロードウェイ開幕直後にはカナダのジャスティン・トルドー首相が観劇し、スピーチも行いました。
Last night, we celebrated the people of Gander on Broadway at #ComeFromAway. Wonderful, moving show – congratulations to the cast & crew. pic.twitter.com/5xBzBYee7R
— Justin Trudeau (@JustinTrudeau) 2017年3月16日
こちらに感想をアップしました。
カム・フロム・アウェイ(Come From Away)
2015年サンディエゴ公演(La Jolla Playhouse)、シアトル公演(Seattle Repertory Theatre)、2016年ワシントンDC公演(Ford’s Theatre)、トロント公演(Royal Alexandra Theatre)を経て、2017年3月にブロードウェイのGerald Schoenfeld Theatreで開幕。