2016〜2017年シーズンの注目作2つ目はオフ・ブロードウェイから上がってきた出演者8人、バンド9人の完全オリジナルのミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』(Dear Evan Hansen)。この小さな作品が、今ブロードウェイで大きな感動と共感を呼んでいます。
一言で言うと、2016〜2017年シーズンに開幕した新作の中でトニー賞の最有力候補といわれており、最もチケットが手に入りにくい作品。作詞・作曲は映画『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の歌曲賞を受賞した “City of Stars” の作詞を手掛けた “Pasek and Paul” という名前で知られるベンジ・パセックとジャスティン・ポールのコンビ。脚本はTVドラマ『マスター・オブ・セックス』のスティーヴン・レヴェンソン。演出は『レント』、『グレイ・ガーデンズ』、『イフ/ゼン』と同じマイケル・グライフです。
オリジナルキャストは全員が素晴らしいパフォーマンスを見せていますが、特に主人公エヴァン役のベン・プラット(Ben Platt)はどうやったら週に8回もあのような演技ができるのかと思うほどの熱演。さらにレイチェル・ベイ・ジョーンズ(Rachel Bay Jones)が演じるハイディ(エヴァンの母)も感動的です。恐らくこの2人はそれぞれトニー賞の主演男優賞と助演女優賞にノミネートされると思われます。
日本からでも各種ダウンロードやAmazonでCDが買えるので予習もできますし、参考までにこのページの最後に登場人物と1幕のあらすじを書きますが、英語に自信があって観劇日まで我慢できれば、真っ白な状態でありのままを楽しむのもオススメです。少しだけ観たいという人にはこちらのTVパフォーマンス動画を。1幕の序盤でエヴァンが歌う “Waving Through a Window” というこの作品の代表曲です。
ディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hanasen)
2015年ワシントンDC公演(Arena Stage)、2016年3〜6月のオフ・ブロードウェイ公演(Second Stage Theater)を経て、2016年12月にブロードウェイのMusic Box Theaterで開幕。2017年2月3日に発売されたキャストアルバムはアメリカのBillboard 200チャートで初登場8位入り。
ネタバレというほどではありませんが、ここから先は登場人物やあらすじなど作品の内容に触れていますのでご注意ください。
登場人物
- エヴァン・ハンセン:学校で周囲に馴染めない孤独な17歳の高校生。夏休みに木から落ちて腕を骨折してギプスをはめている。ゾーイに片想い中。
- ゾーイ・マーフィー:エヴァンが片想いしている女の子。コナーの妹。
- コナー・マーフィー:エヴァンの同級生。攻撃的で友達がおらず、家族に対しても暴言を吐く。
- ハイディ・ハンセン:エヴァンの母。看護助手の仕事をしながら法科大学院に通っており、ほとんど家にいない。社交性のない息子エヴァンのことが理解できず苦しんでいる。
- シンシア・マーフィー:コナーとゾーイの母。専業主婦。
- ラリー・マーフィー:コナーとゾーイの父。仕事熱心だが、多忙でマーフィー家の中での存在は薄い。
- アラナ:エヴァンのクラスメート。優等生タイプ。
- ジャレッド:エヴァンのクラスメート。友達がいないエヴァンにとっては最も近い存在。
あらすじ
主人公エヴァンは友達のいない高校生。ある日、エヴァンが心理療法士から勧められて書いた自分宛の手紙をコンピューター室で印刷していると、偶然その手紙がコナーの手に渡ります。
その何日か後のこと。コナーはエヴァンの手紙をポケットに入れたまま自殺してしまいます。残された両親はコナーのポケットの中にあった手紙をエヴァンがコナーに宛てて書いたものだと勘違いし、エヴァンを息子の友達として家に招待します。エヴァンはコナーの両親に本当のことを話すつもりでしたが、彼らをこれ以上悲しませたくないという気持ちとゾーイに近づきたいという気持ちから、コナーと自分はよい友達だったと嘘をついてしまいます。
この嘘によってエヴァンは学校でも注目を集め、クラスメートのアラナが立ち上げる「コナー・プロジェクト」の共同会長になります。そして、エヴァンが集会で行ったスピーチがSNSで大注目を集めるのですが—。