2016〜2017年シーズンのブロードウェイ注目ミュージカルを順番に紹介。最初に紹介するのはトルストイの『戦争と平和』がベースのエレクトロ・ポップ・オペラ『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』(Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812)。全編歌唱スタイルの作品です。
※このページは作品紹介が中心になります。ブロードウェイ版の感想はこちらへ。
ブロードウェイで『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』が上演されているのはインペリアル劇場。内部が大改装されており、客席に入るとロシアの高級ナイトクラブのような光景が広がります。このミュージカルの見どころは舞台と客席の一体感。観客が舞台上に座れるステージシートやキャストが舞台と客席を行きするための通路が設けられており、キャストと観客の距離が非常に近くなっています。
この作品を観るときには、劇場でもらえるPlaybillに入っている人物関連図に目を通しておくことをオススメします。嫌煙するほどではないのですが、登場人物とその関係が若干ややこしく、第1幕の「プロローグ」にはこんな歌詞が出てきます。
You’re gonna have to study up a little bit
If you wanna keep with the plot
…
So look it up in your program
We’d appreciate it, thanks a lot
話についてきたいなら
ちょっと勉強しなきゃダメ
(中略)
プログラムで調べてね
どうもありがとう
参考までに一応簡単に説明すると、『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』はナターシャという若くて天真爛漫な女性の恋と彼女を取り巻く人間模様が描かれた作品です。登場人物の関係と特徴をまとめると以下のとおり。でも、万が一ストーリーの展開に付いていけなくなったら、舞台の雰囲気とパフォーマンスに集中して楽しめばOKです。
- ナターシャ:アンドレイと婚約中。アンドレイがナポレオン戦争から帰ってくるまでの間をモスクワで過ごす。モスクワのオペラでアナトールに出会い恋に落ちる。
- ピエール:上流階級の哲学者。社会に馴染めない。アンドレイの親友であるため、ナターシャとアナトールの熱愛に巻き込まれる。
- アナトール:お酒と女性が好きなイケメン男性。既婚者だが、ナターシャに興味を持つ。
- ソーニャ:ナターシャの従姉妹でナターシャと一緒にモスクワへやって来る。ナターシャのアナトールとの熱愛を心配する。
- ヘレン:アナトールの姉。ピエールの妻だがあまり誠実ではない。
- マリヤ:モスクワでナターシャとソーニャの面倒を見る。厳しいがナターシャを導こうとする親切な人。
- ドーロホフ:アナトールの友人。ピエールの妻ヘレンと親密な関係にある。
- アンドレイ:ナターシャの婚約者。ナポレオン戦争で戦っている。真面目な性格。
- ボルコンスキー:アンドレイの父。年老いている。ナターシャのことを認めない。
- メアリー:アンドレイの妹。父ボルコンスキーの面倒を見ており、自由奔放なナターシャのことが羨ましい。
- バラガ:アナトールが信頼する運転手。
また、本作は『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』のようにほぼ歌いっぱなしのミュージカルなので、英語はわかるけれど英語の歌詞を聞き取るのが苦手という人は、Playbillのあらすじ(synopsis)や公式ページのスタディーガイド(英語です)を読むのもオススメです。
それでも物足りない!もっと予習(や復習)がしたい!という人は、ブロードウェイのキャストレコーディング(左)と書籍(中央)を。オフ・ブロードウェイのキャストレコーディングCD(右)もあります。
本作には2017年7月2日まで歌手のジョシュ・グローバンがピエール役で出演しており、今シーズンのいわゆる「スターキャスト」の一つとなっています。ナターシャのほうが主演らしい役なので、彼だけが目当てで行くと少しがっかりしてしまうかもしれませんが、ブロードウェイデビューとは思えないほどの仕上がりで評判もとても良いです。ただし、ジョシュ・グローバンが出演しない日がちらほら事前発表されているので、ジョシュ・グローバンを見たい方はこちらもご参考に。
感想はこちらへ。
2012年にArs Nova劇場にて初演。その後2013年〜2014年にKazino in the Meatpacking DistrictとKazino in Times Squareで上演し、2016年11月よりブロードウェイのImperial Theaterにてオープンランで(期限を定めずに)上演。