1945年から存在する歴史あるミュージカル『回転木馬』のリバイバル公演。私はメジャーな楽曲を知ってはいたものの、全編通して観劇するのは初めて。とりあえず、偉大な作品であることはわかりました。
今回のリバイバル公演では、ビリー役にジョシュア・ヘンリー、ジュリー役にジェシー・ミューラー、キャリー役にリンジー・メンデス、イノック役にアレクサンダー・ジャミニャーニ、ネティ役にルネ・フレミングという大作に相応しいキャストを揃えてきています。
ここに挙げた5名は全員トニー賞の主演または助演でノミネートされており、トニー賞のアクティング部門は『回転木馬』だらけ。オペラ界から招いたルネ・フレミングをはじめ、主要キャストを120%歌える人で固めたのは、楽曲に敬意を払ってのことでしょうか。
ルネ・フレミングに限らず、キャストのパフォーマンスについては「素晴らしい」の一言。震えるレベル。冒頭、ジュリーとビリーの掛け合いの歌を聞いているだけで、すっかりチケット代の元は獲れた気分に。1幕ラストのビリーのソロ Soliloquy も圧巻。
振付も素晴らしい。木馬のセットを作らずにダンスで表現したという点が新しいし、後半には10分を超えるかなり本格的なバレエシーンもあります。
ただ、演出は賛否両論。今回のリバイバル公演は、”There’s Nothin’ So Bad for a Woman” というもともと2幕にあった曲を丸ごとカットしており、かなりの変更を加えた版。ミュージカルに滅多に参加しないルネ・フレミングが制作・プレビュー段階を経験して、「70年以上前から存在する名作を上演するにあたり、こんなに変えるなんて思わなかった・・・・・・」と大変驚いていらったのが印象的でした。
よく言われるのが、ジュリーとビリーの間で心が通っているところがあまり見えないという点。ワンシーン、ワンシーンは目を見張る出来なのですが、ちょっとピンと来ないというか・・・・・・。深すぎて私が理解できなかったのかもしれない・・・・・・。出演者曰く、現代の女性が共感できるような強い女性を意識し、プレビューの最後の最後までかかって演技の方向性を探ったようですが、ここは「うーん」という感じ。
壮大でスピリチュアルなイメージはなんとなく伝わってきたのですが、気付けばついコンサートを聞いているような気分に・・・・・・。何にいちばん感動したかと聞かれたたら、「ルネ・フレミングが歌った You’ll Never Walk Alone!」と答えそうな自分がいます。(笑)
ま、それでも「満足」といえるのが今回の『回転木馬』リバイバル公演。見応えあり。ブラボー。