第71回トニー賞のノミネートが発表されました。今シーズンのブロードウェイ作品は7作観ましたが、個人的にはショッキングなノミネートやノミネート漏れはなく、わりとストレートな内容だったのではないかと思います。また、無理に散らした感じもなければ、特定の作品を持ち上げた感じもないのが好印象。
ミュージカル関連部門のノミネートのみ、コメントと共に紹介します。
Best Musical ミュージカル作品賞
- Come From Away『カム・フロム・アウェイ』
- Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』
- Groundhog Day『恋はデジャ・ブ』
- Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
今年は13作の新作ミュージカルがオープンしました。数的には多いほうなので、5作目のノミネートを期待する声もありましたが、シーズンのレベル的には4枠で十分だったように思います。5枠あれば “Nominee for Best Musical” と宣伝できる作品が1つ増えるわけですが、恐らく同点や僅差の作品がなかったということだと思いますし、むやみにノミネートすると賞の価値を下げてしまうので、4枠だったことにはどちらかというと好感を持ちました。
Best Revival of a Musical ミュージカルリバイバル作品賞
- Falsettos『ファルセットズ』
- Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』
- Miss Saigon『ミス・サイゴン』
ノミネートを逃したのは『キャッツ』と『サンセット大通り』でした。『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』は選考辞退です。『キャッツ』は観光客に知名度でアピールできているようですし、『サンセット大通り』も主演のグレン・クローズで成り立っている期間限定公演なので、トニー賞を逃したからといって騒がなくても大丈夫そう。ほっ。
どちらかというと、気になるのはトニー賞授賞式でのパフォーマンスです。『ファルセットズ』は随分前にクローズしていますが、リバイバル作品賞、主演男優賞、助演男優賞(×2名)がノミネートされているので、ひょっとしたらパフォーマンスも観られるのでしょうか。『サンセット大通り』はノミネートがゼロになってしまいましたが、授賞式でのパフォーマンスを期待したいです。どうかなぁ。
Best Performance by an Actor in a Leading Role in a Musical ミュージカル主演男優賞
- Christian Borle クリスチャン・ボール
Falsettos『ファルセットズ』 - Josh Groban ジョシュ・グローバン
Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』 - Andy Karl アンディ・カール
Groundhog Day『恋はデジャ・ブ』 - David Hyde Pierce デヴィッド・ハイド・ピアース
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』 - Ben Platt ベン・プラット
Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』
ここは大体ノミネートの予想がついたのですが、『ミス・サイゴン』エンジニア役のジョン・ジョン・ブリオーンズが残念なことに。よかったのですよ、とても。でも、『ファルセットズ』のクリスチャン・ボール以外の4人を観ましたが、その4人の中にノミネートに相応しくない人がいるかというとそんなことはなかったので、こうなってしまったのかなと。枠が足りません。
Best Performance by an Actress in a Leading Role in a Musical ミュージカル主演女優賞
- Denée Benton デニー・ベントン
Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』 - Christine Ebersole クリスティン・エバーソール
War Paint『ウォー・ペイント』 - Patti LuPone パティ・ルポーン
War Paint『ウォー・ペイント』 - Bette Midler ベット・ミドラー
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』 - Eva Noblezada エヴァ・ノブルザダ
Miss Saigon『ミス・サイゴン』
ここは『サンセット大通り』のグレン・クローズが選考対象外。ベット・ミドラーの受賞の可能性が極めて高いですが、ノミネートの予想はなかなか困難でした。『ウォー・ペイント』のクリスティン・エバーソールとパティ・ルポーンは劇評で絶賛されており、前哨戦でもコンスタントにノミネートされていたので当確と思われましたが、どうなるかよくわからなかったのが残りの2人。
『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』がもし選考を辞退していなかったらアナリー・アシュフォードが入っていたと思うのですが、彼女は残念ながら選考対象外。デニー・ベントン、エヴァ・ノブルザダの他には、『アナスタシア』主演のクリスティ・アルトメア、『アメリ』主演のフィリッパ・スー、『バンドスタンド』主演のローラ・オスなどに可能性がありましたが、前哨戦の結果が賞によってかなり割れていました。私が観たのはベット・ミドラー、デニー・ベントン、エヴァ・ノブルザダ、クリスティ・アルトメアの4人でしたが、ベット・ミドラー以外ではデニー・ベントンが好みでした。単独主演ではないのですが、繊細で華があってよかったです。
Best Performance by an Actor in a Featured Role in a Musical ミュージカル助演男優賞
- Gavin Creel ギャヴィン・クリール
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』 - Mike Faist マイク・ファイスト
Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』 - Andrew Rannells アンドリュー・ラネルズ
Falsettos『ファルセットズ』 - Lucas Steele ルーカス・スティール
Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』 - Brandon Uranowitz ブランドン・ウラノヴィッツ
Falsettos『ファルセットズ』
ここは前哨戦でオフ・ブロードウェイに食われ気味だったカテゴリー。今シーズンはちょっと薄かった印象を受けましたが、見方を変えればいろんな人にチャンスがあったということ。マイク・ファイストは良い意味でサプライズ感がありました。
Best Performance by an Actress in a Featured Role in a Musical ミュージカル助演女優賞
- Kate Baldwin ケイト・ボールドウィン
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』 - Stephanie J. Block ステファニー・J・ブロック
Falsettos『ファルセットズ』 - Jenn Colella ジェン・コレッラ
Come From Away『カム・フロム・アウェイ』 - Rachel Bay Jones レイチェル・ベイ・ジョーンズ
Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』 - Mary Beth Peil メアリー・ベス・ペイル
Anastasia『アナスタシア』
レイチェル・ベイ・ジョーンズ以外は、アウター・クリティクス・サークル賞とドラマ・デスク賞と全く同じ顔ぶれになりました。(レイチェル・ベイ・ジョーンズは『ディア・エヴァン・ハンセン』のオフ・ブロードウェイ上演時にすでにこれらの賞の選考対象になっているので、今シーズンはこれらの賞では選考対象外でした。)
でも実はこの部門、各作品を観ていたときにノミネートされてほしい人がどんどん思いついたカテゴリーで、今シーズンの中ではいちばん充実していたように思います。例えば、『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』のブリテイン・アシュフォードが歌った “Sonya Alone” は感動的だったし、『ディア・エヴァン・ハンセン』のジェニファー・ローラ・トンプソンは、ソロ曲はなかったけれど息子を亡くした母親を繊細に演じていて素敵でした。あと、『恋はデジャ・ブ』でアンディ・カールの相手役を務めたバレット・ドス。彼女が演じるチャーミングなリタ役のおかげで、物語の魅力が何倍にも増していたように思います。枠が足りない!足りない!!
Best Book of a Musical ミュージカル脚本賞
- Irene Sankoff & David Hein アイリーン・サンコフ&デヴィッド・ハイン
Come From Away『カム・フロム・アウェイ』 - Steven Levenson スティーヴン・レヴェンソン
Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』 - Danny Rubin ダニー・ルービン
Groundhog Day『恋はデジャ・ブ』 - Dave Malloy デイヴ・マロイ
Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
おぉっと!作品賞と全く同じ。
Best Original Score (Music and/or Lyrics) Written for the Theatre 楽曲賞
- Irene Sankoff & David Hein アイリーン・サンコフ&デヴィッド・ハイン
Come From Away『カム・フロム・アウェイ』 - Benj Pasek & Justin Paul ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール
Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』 - Tim Minchin ティム・ミンチン
Groundhog Day『恋はデジャ・ブ』 - Dave Malloy デイヴ・マロイ
Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
おぉっと!ここも作品賞と全く同じ。
Best Scenic Design in a Musical ミュージカル装置デザイン賞
- Rob Howell ロブ・ハウエル
Groundhog Day『恋はデジャ・ブ』 - David Korins デヴィッド・コリンズ
War Paint『ウォー・ペイント』 - Mimi Lien ミミ・リアン
Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』 - Santo Loquasto サント・ロカスト
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』
Best Costume Design in a Musical ミュージカル衣装デザイン賞
- Linda Cho リンダ・チョー
Anastasia『アナスタシア』 - Santo Loquasto サント・ロクアスト
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』 - Paloma Young パロマ・ヤング
Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』 - Catherine Zuber キャサリン・ズーバー
War Paint『ウォー・ペイント』
Best Lighting Design of a Musical ミュージカル照明デザイン賞
- Howell Binkley ハウエル・ビンクリー
Come From Away『カム・フロム・アウェイ』 - Natasha Katz ナターシャ・カッツ
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』 - Bradley King ブラッドリー・キング
Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』 - Japhy Weideman ジャフィー・ワイデマン
Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』
Best Direction of a Musical ミュージカル演出賞
- Christopher Ashley クリストファー・アシュリー
Come From Away『カム・フロム・アウェイ』 - Rachel Chavkin レイチェル・チャフキン
Natasha, Pierre & the Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』 - Michael Greif マイケル・グライフ
Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』 - Matthew Warchus マシュー・ウォーチャス
Groundhog Day『恋はデジャ・ブ』 - Jerry Zaks ジェリー・ザックス
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』
ここも作品賞にノミネートされた新作4つと『ハロー・ドーリー!』。
Best Choreography 振付賞
- Andy Blankenbuehler アンディ・ブランケンビューラー
Bandstand『バンドスタンド』 - Peter Darling & Ellen Kane ピーター・ダーリング&エレン・ケイン
Groundhog Day『恋はデジャ・ブ』 - Kelly Devine ケリー・ディヴァイン
Come From Away『カム・フロム・アウェイ』 - Denis Jones デニス・ジョーンズ
Holiday Inn『ホリデー・イン』 - Sam Pinkleton サム・ピンクルトン
Natasha, Pierre & the Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
ここは残念ながら『ハロー・ドーリー!』が選考対象外。アウター・クリティクス・サークル賞やドラマ・デスク賞は選考対象に入れていますが、トニー賞はNGと判断したんですね・・。トニー賞では名前が挙がりませんが、アンサンブルのダンスが輝かしいので、是非注目してみてください。(すでに結果が発表になったアウター・クリティクス・サークル賞では振付賞を受賞しています。)
Best Orchestrations 編曲賞
- Bill Elliott & Greg Anthony Rassen ビル・エリオット&グレッグ・アンソニー・ラッセン
Bandstand『バンドスタンド』 - Larry Hochman ラリー・ホックマン
Hello, Dolly!『ハロー・ドーリー!』 - Alex Lacamoire アレックス・ラカモア
Dear Evan Hansen『ディア・エヴァン・ハンセン』 - Dave Malloy デイヴ・マロイ
Natasha, Pierre & the Great Comet of 1812『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
トニー賞前哨戦や最近のその他アワードの結果もご参考に。
- 2017年ドラマ・デスク賞ノミネート発表
- 2017年アウター・クリティクス・サークル賞結果発表
- 2017年ドラマ・リーグ賞ノミネート発表
- 2017年ピューリッツァー賞発表 – 戯曲部門の結果
- 2017年オリヴィエ賞結果発表 – ブロードウェイ目線
3月くらいに作品賞のノミネートを予想した記事はこちらへ。今年の作品賞(新作)は、受賞は混戦ですが、ノミネート自体はそうでもなかったという印象。4月に大量の新作が開幕しましたが、結局その中からノミネートされたのは『恋はデジャ・ブ』1作のみでした。
注目作の紹介も。
- 2016〜2017年シーズン注目作① – ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812
- 2016〜2017年シーズン注目作② – ディア・エヴァン・ハンセン
- 2016〜2017年シーズン注目作③ – カム・フロム・アウェイ
今年の第71回トニー賞授賞式もWOWOWで生中継。案内人はおなじみの宮本亜門さんと八嶋智人さん、スペシャルゲストは井上芳雄さんとV6の坂本昌行さん。昨年は「演劇・ミュージカルの祭典!トニー賞直前SP 」という事前番組で井上芳雄さんが現地ニューヨークを訪問された様子が放送されましたが、今年はV6の坂本昌行さんが行かれたそうで、「坂本昌行 ブロードウェイ・リポート トニー賞直前SP in NY」という番組が放送されるようです。
坂本昌行 ブロードウェイ・リポート トニー賞直前SP in NY
2017年6月3日(土)夜7:00(再放送予定あり) [WOWOWプライム]
生中継!第71回トニー賞授賞式
2017年6月12日(月)午前8:00(同時通訳) [WOWOWプライム]
第71回トニー賞授賞式
2017年6月17日(土)夜7:00(字幕版)[WOWOWプライム]