1997年のアニメーション映画をもとにした舞台版『アナスタシア』。あらすじはウィキペディアなどにお任せします。
この作品、映画の知名度もそこそこあるせいか、開幕前からチケットの売れ行きは良いほうでした。しかし、劇評は今ひとつぱっとせず、トニー賞のノミネートも助演女優賞と衣装デザイン賞の2部門だけ。でも、観て納得しました。
最先端技術を取り入れた古風な作品とでもいいますか・・。感想を一言で表すなら、「もっと気に入りたかった」。すぐに忘れてしまいそうです。
上演時間は休憩ありの2時間30分。一般的な長さですが、のんびりとした作品でとても長く感じました。プレビューが始まる前に公式ウェブサイトを確認したときは2時間20分という案内になっていたのですが、プレビュー中にかなり中身を変更したらしく、開幕後に行ったら延びていました。あと20分くらい短くてもよいと思ったのですが・・。
今でもパッと思い出せるのは、
- ♪ワンス・アポン・ア・ディセンバー(Once Upon a December) と♪ジャニー・トゥ・ザ・パスト(Journey to the Past)のような最初から知っていた名曲
- プロジェクション
- 豪華で素敵なコスチューム
- 拍手が起こったバレエシーン
と、こんな感じです。
キャストに関しては、主演のクリスティ・アルトメアは絶賛というほどではないもののよかったですし、他のキャストもみんな上手。日本でも人気のラミン・カリムルーもグレブという役で出演。トニー賞のノミネートはメアリー・ベス・ペイルの助演女優賞のみですが、トニー賞以外のアワードではクリスティ・アルトメア、ジョン・ボルトン、キャロライン・オコナーもノミネートされています。
でもね・・。この作品、ストーリーと登場人物そのものの魅力が足りないように感じます。素晴らしいキャストが演じているのに、眺めているだけになってしまって、なんだか勿体ない。登場人物の誰かに心を奪われるとか、応援したくなるとか、そういう感覚が味わえなかったので、結果的にこの作品に2時間30分没頭できなかったわけです。正直、キャストの努力でなんとかなるものではなさそう。
というわけで、「綺麗だなー。すごいなー」で終わってしまったので、確かな感動を求める人にはあまりオススメできません。でも、現地のブロードウェイファンの中にも「感動した」とは言っていなかったけど、「よかった」と言っている人はいましたので、いわゆるスペクタクル・ミュージカルやロマンチックな作品が好きなや人は楽しめるのかも。ブロードウェイの客席では、子どもやティーンを連れた家族、それから観光客らしき人も見かけました。公式案内では対象年齢は7歳以上になっています。
子どもで思い出しましたが、キャストの中に子役の女の子が1人いて、少女時代のアナスタシアと、アナスタシアの弟アレクセイ・ロマノフを演じます。最初は1人で演じていることを知らなくて、カーテンコールで「あれ?もう1人小さい子いなかったっけ?」とプレイビルを確認したら、同じ子が演じていました。確かに、言われてみればどちらの役も出番は多くないし、同時には登場しないので可能です。
あと、もしブロードウェイで『アナスタシア』を観ることを考えていて、これからチケットを買う予定の人がいれば、2階席(メザニン席)はオススメです。『アナスタシア』を上演しているブロードハースト・シアター(Broadhurst Theatre)は劇場が小さめなので、舞台との距離感をそこまで感じません。逆に1階席の後方座席に座ると2階席の出っ張り(オーバーハング)が気になる可能性があるのでご注意を。『アナスタシア』ブロードウェイ公演では、一部のシーンでプロジェクションがボックス席や2階席の壁の一部にも投影されます。私は2階席前方のほぼど真ん中の座席でしたが、2階のセンターから観るプロジェクションはとても美しくて圧巻で、このときばかりは「おぉっ!」と思いました。
2017年5月現在、トニー賞の宣伝効果をほとんど受けていないわりには興行的に健闘していますが、日によってはチケットが割引ルートにも出回り始めたので、tktsやTodayTixもご確認を。
日本を含め海外でも上演する計画があるようですが、映画の人気と知名度で何とかなるものなのでしょうか・・。プロジェクションはやるのかな??
2016〜2017年シーズンのブロードウェイ感想はこちらへ。
(左:ブロードウェイ版CD、右:楽譜)