日本でも映画館で上演された「25周年記念公演キャスト in ロンドン2014」のキャストが何名か出ていたので、実際に観てみようと行ってきました。
最初に断っておかなければならないのですが、残念ながらこの作品については公演の感想をあまり語ることができません。なぜなら、ラッシュチケットで買った席が見切れすぎだったから。なので、書けることだけ書いて、残りは私の過去最悪のラッシュチケット体験談とさせてください。
全体的なこととしては、舞台や演出については東宝版と大きくは変わらなかったという印象。キャストのレベルは高いと思いましたが、驚くほどのレベルではないというのが正直なところです。お疲れだったのかな・・?ちょっとよくわかりませんが、アンダースタディ(後述)の影響はあったと思います。
キム役のエヴァ・ノブルザダは、役の年齢に近いだけあって(キムは17歳の役でエヴァは現在21歳)、愛とか母性とかよりも懸命に生きているところがよかった。
エンジニア役のジョン・ジョン・ブリオーンズもその「懸命に生きている」というところが同じ。「生き延びるたいなら何でもやらなきゃ。何か悪い?」です。したたかさと純粋さを良い具合に兼ね備えているように見えました。
クリス役は、私が観た回では本役のアリスター・ブラマーが出演しておらず、アンサンブル兼アンダースタディの人でした。本作がブロードウェイデビューの若手で、健闘はしていたのですが、少々若くてハッピーすぎるクリスで・・。
泥沼の中で見つけた安らぎ
サイゴンは修羅場だがあの子にみたのだ 一時の夢を♪
に繋がる説得力がなかったり、エレンともアンバランスだったり。クリスの重要性を再認識。
その他は、ジョン役がややモッサリとしていて「ブイ・ドイ」の感動が薄かったことが残念。トゥイ役はあまり印象に残らず。エレン役のケイティー・ローズ・クラークとジジ役のレイチェル・アン・ゴーは、キャラクターもソロ曲も素晴らしくて大満足。ジジの「我が心の夢」とエレンの「メイビー」の場面が見切れなかったのは本当に救いでした。
さて、ここからはラッシュ体験談になります。
実はこの作品は今シーズンのブロードウェイ作品の中で絶対に観たい作品リストの中には入っておらず、最後の最後まで別の作品と迷って、当日の朝にラッシュチケットを買いました。39ドルで観させてもらっておいてこんなことを言うのは憚られるのですが、このラッシュチケットが未だかつてないほど見切れる席でして、どんな席だったかというと、
- 視界からよく誰もいなくなった。
- 1曲丸ごと音しか聞こえない場面があった。
といった感じ。
1階サイド席の超前方で、座席表で観る限りは大丈夫そうかなと思っていたのですが、実際に座ってみたところ、『ミス・サイゴン』を上演しているブロードウェイ劇場(Broadway Theatreという名前です)は舞台が高い!!首が痛くなるのは我慢するにしても、舞台後方1/3がどんなに頑張っても全く見えないのです・・。背が高い大人キャストは後ろのほうに行かない限りなんとか見えるのですが、辛いのはタム(キムの子ども)とキム。まず、タムが小さいので見えないし、さらにキムが頻繁に座ったりタム目線になるためキムまで見えない。これが想定外にキツかった。
こんなことを書くと「ラッシュチケットってそんなに恐ろしい席なのか?」と思われるかもしれませんが、劇場や作品次第です。私自身、今回ほど微妙な視界だったことはありません。『ミス・サイゴン』のラッシュでもここまで見づらい席が回ってくるのは稀らしく、ほぼ支障のない席だったという話を聞くことの方が多いです。ちなみにこの日の『ミス・サイゴン』のラッシュは、窓口オープン時間後に並んでも難なく買え、私より後から来た人も買えていました。もっと早くから並んでいたらもう少し観やすい席になっていたかどうかはわかりません。こればっかりは運だと思っています。
とりあえず、この劇場(Broadway Theatre)は舞台が高いので、前方席は要注意ということだけはよーくわかりました。こんなことなら、安定して2階席をラッシュで売ってもらえると噂の別の作品を観に行けばよかったョ。
ついでに書いておくと、この作品は主要キャストが抜けることがやや多いです。エヴァは毎週8公演中2公演は確実に出演しません。2017年5月18日時点では水曜の夜と土曜の昼は出演しないと公式サイトのFAQの目立たないところでアナウンスされています。変更されるかもしれないので、随時こちらでご確認を。週1公演オフは時々聞きますが、2公演オフはちょっと珍しい気が。ジョン・ジョンも週1で休演していた時期があるようなので、本役で観たい方は登板情報を確認することをおすすめします。
私も2人の休演予定を避けて日程を選んだ上で、「エヴァとジョン・ジョンは出ますか?」と窓口でも確認しました。そうしたら、窓口の人に「今のところ何も聞いてない。開演1時間前にボードで確認して」と言われたので、「ちょっと不親切だな・・」と思いながらもチケットを購入しましたが、開演前にボードで発表されていたのがアリスター・ブラマーの休演でビックリ。チケット購入時に教えてもらえなかったのは、
- 私がアリスター・ブラマーの名前を出して聞かなかったから
- 本当に急な休演だったから
のどちらかなわけですが、もし前者だったとしたら、「誰か出演しない人はいますか?」と聞かなかったことが悔やまれます。(涙)
というわけで、ちゃんとした席から観ていればもう少し別の感想になったかもしれませんが、私のブロードウェイ『ミス・サイゴン』体験は総じて残念なものになってしまいました。先に投稿した『アナスタシア』と比較すると、主演とアンサンブルは『ミス・サイゴン』、助演は『アナスタシア』にやや軍配が上がるかなという感覚。座席やアンダースタディの件も含めた観劇体験としては、間違いなく『ミス・サイゴン』が今シーズンのワーストです。それでも一応『アナスタシア』よりも『ミス・サイゴン』を上に持ってきたのは、やはり作品としては『ミス・サイゴン』を支持したいというのが主な理由かな・・。
トニー賞のパフォーマンスでは、テレビ放送ならではのベストアングルで堪能させてもらいたいと思います。
2016〜2017年シーズンのブロードウェイ感想はこちらへ。