本日、大阪にて大千穐楽を終えたミュージカル『ビリー・エリオット』。東京で5回観劇し、全配役全キャストを拝見することができました。
本当に本当によかった。何度でもリピートしたいと思える作品とカンパニー。日本でここまでクオリティが高く充実した舞台を観られる機会はそうそうない。
2006年ローレンス・オリヴィエ賞ミュージカル作品賞受賞、2009年トニー賞ミュージカル作品賞受賞。この作品には、家族、友情、階級社会、マイノリティなど様々なテーマが流れていて、誰が観てもその人なりに感動できる。何度観ても新しい発見があったし、カンパニーは開幕してからも進化し続けていて、ライブシアターの醍醐味を存分に味わうことができました。
せっかくなので各ビリーについても一言ずつ感想を。観た順です。
きれいなボーイゾプラノを聞かせてくれる歌うまビリー。1曲目のThe Stars Look Downの第一声から上手だったなー。最年長ということもあり、自然体というよりは練られたプランや表現したいものがありそうなビリーでした。私が観たのは開幕直後でしたが、きっとその後どんどんよくなっていったのだろうと思います。
さすが最年少11歳。反則的に可愛い。幼くて守ってあげたくなるような木村ビリーは、私の心をふにゃふにゃに解きほぐしてくれました。木村ビリーが放つ言葉はどれも胸に突き刺さる。「ちょっと早めに読んじゃった」「寂しいよ、先生」・・。特にLetterのナンバーでの「行かないで」には号泣。いちばん笑えて泣けたビリーだったな。
それから私、木村ビリーのお芝居がとても好きです。すごく自然で、相手の良さが引き立つようなお芝居。木村ビリーで観た回は、お父さん、ウィルキンソン先生、マイケル、トニーなどなど誰とやり取りしていても心が通っている感じがして、皆が生き生きして見えました。運動神経が良くて、ダンスもターンの回転スピードがものすごく速い!Dream Balletでオールダー・ビリーの背中を転がるときもちゃんと足を上げていて、頑張ってるなぁ・・と感心。
いい意味でツンとしたところのあるビリー。まだバレエを知らない頃のシーンから所作を見ているだけでバレエの才能がひしひしと感じられるのはバレエ経験者ならでは。加藤ビリーでいちばん印象に残ったのはSolidarity。ビリーのソロナンバーではないけれど、9分近いビッグナンバー。ビリーがバレエに目覚めていく過程が描かれる大切なシーンを、加藤ビリーは繊細に、そして抜群の説得力をもって見せてくれました。
加藤ビリーは真っ直ぐなところや、技術力が高くてストイックなところが好きです。加藤ビリーの技術力の高さは得意のバレエだけでなく、未経験だったというタップでも感じました。Angry Danceの冒頭、「踊れろくでなしー」という叫びの後に踏み始めたタップの正確なこと!リズムが全く狂わない。劇場中に響き渡っていたクリアでブレないタップには、加藤ビリーの強い気持ちが表れている気がして、胸が張り裂けそうになりました。
ビリーが似合い、真ん中が似合う。クセのない正統派なビリーです。エネルギーと華がありながら素朴さもあって、ルックスや佇まいも含めてとても気に入りました。ダンスもここぞというところで決める強さがあるし、演技と歌も制作発表やオーディション当時の映像とは比べものにならないくらい上手くなっていました。
全身から音が聞こえてくるような運動神経と音楽的センスのある子。キャスティングに関わった人たちはきっと「この子のビリーを観てみたい」って思ったんだろうなー。オーディション番組などを見ていて、私もそう思っていました。
5人目のビリーとして他の4人より遅れてのデビューでしたが、東京公演終盤の時点で完成度はとても高かったです。手足が長くてスタイルが良く、栗山オールダー・ビリーとのDream Balletが息ピッタリで、シルエットも綺麗でした。
5人のビリーはみんな「ビリー」でした。もちろん特にいいなと思ったビリーはいたけれど、それは好みとその公演回での出来や誤差の範囲。ビリーはもちろん、お父さんも、ウィルキンソン先生も、トニーも、マイケルも、どの役替わりキャストも、みんな違うのにみんなハマっている。ただ単に上手いとか、安定しているとか、そういう次元ではなく、役として “believable” な人が選ばれているから、現実に引き戻されることがありませんでした。
『ビリー・エリオット』日本初演では、制作から稽古のやり方に至るまですべてを徹底的に本国に倣ってやったとのことですが、ブロードウェイやウエストエンドで作品を手掛けるクリエイティブスタッフの審美眼と指導力、そして作品に対する熱意は本当にすごいです。今回、この作品を海外スタッフを招いて本気で日本で作り上げて見せてくださったホリプロや関係者の方々に心からお礼を言いたいです。