2014年トニー賞作品賞受賞作『紳士のための愛と殺人の手引き』が4月8日に日本で開幕しました。日本初演ということで初日に行ってきました。
脚本・歌詞:ロバート・L・フリードマン
音楽・歌詞:スティーブン・ルトバク
原作:ロイ・ホーニマン
翻訳:徐賀世子
訳詞:高橋亜子
演出:寺崎秀臣
『紳士のための愛と殺人の手引き』はエドワード朝時代のイギリス貴族社会の階級を背景にしたコメディミュージカル。母親を亡くしたモンティが、母が裕福な家庭の出身で自分が伯爵継承順位8番目であることを知り、自分より上位の邪魔者を愉快な方法で殺していくという話で、殺される上位者はすべて同じ役者(日本版では市村正親さん)が演じます。トニー賞作品賞受賞作というだけのことはあって、知性あふれる本当によくできた作品です。
楽曲は控えめで主張しないので、ドラマチックなビッグナンバーの連続を期待していくと「?」となりますが、とにかく軽やかで心地よく、綺麗です。インパクトのあるナンバーを1つだけ挙げるとしたら、宮澤エマさん、シルビア・グラブさん、ウエンツ瑛士さんの3人で歌う “I’ve Decided to Marry You” (♪結婚します)かな。
(ブロードウェイ公演より)
このところ、『ノートルダムの鐘』、『ビッグフィッシュ』、『キューティ・ブロンド』、『紳士のための愛と殺人の手引き』と輸入ミュージカルの日本初演を立て続けに観ましたが、『紳士のための愛と殺人の手引き』の翻訳と訳詞は最高難度なのではないかと思います。翻訳は『セックス・アンド・ザ・シティ』などで有名でコメディを得意とする徐賀世子さんで、訳詞は『ミー・アンド・マイ・ガール』でおなじみの高橋亜子さん。翻訳上演されるミュージカルの中には、ときどき耳を塞ぎたくなるようなテンポの悪い訳が出てくることもありますが、そういう箇所は思い当たらず。日本語版は劇場で一度しか聞いておらず、対英語で確認したわけではありませんがとりあえず安心。
初日はもしかして・・と思っていた通り、脚本と作詞のロバート・L・フリードマン(Robert L. Freedman)さんと作曲と作詞のスティーブン・ルトバク(Steven Lutvak)さんがお越しになっていて、カーテンコールで紹介がありました。ロバートさんはトニー賞脚本賞の受賞者!!
カーテンコール映像はYoutubeに動画がアップされるかな〜と思っていたのですが、今のところアップされていないようなので、ロバートさんとスティーブンさんのことを中心に、思い出せる範囲でメモ。
市村正親さんとウエンツ瑛士さんの挨拶が終わった後、ウエンツさんからの紹介でお二人が舞台に上がられ、ロバートさんには宮澤さんから、スティーブンさんにはシルビアさんから、それぞれの役の衣装と同じ色のブーケが手渡されました(宮澤さんはグリーン、シルビアさんはピンク)。
その後にロバートさんとスティーブンさんから一言ずつお話がありましたが、お二人はこれまで日本に作品を頻繁に提供してきたコンビではないのでコメントが新鮮。感謝の言葉は、東宝をはじめとするプロデューサー陣やキャストはもちろんのこと、オーケストラや翻訳者にまで向けられました。「この作品を作っていたときは、まさか日本で上演されることになるなんて思ってもいなかった」ともおっしゃっていて、社交辞令ではなく本当に満足しているのが伝わってきました。
ロバートさんは初日キャストを褒めた後、すかさずWキャストで翌日初日を迎える柿澤勇人さんに「明日は君を観に来るからね!」と温かい言葉を掛けていたし、スティーブンさんはシルビアさんから渡された可愛らしいピンクのお花について「どうして僕がピンクなの?」とコメントしていて、終始和やかでとても良い雰囲気でした。
左:ブロードウェイオリジナルキャストCD
右:楽譜セレクション(13曲入り)
ブロードウェイでこの作品が最もウケた客層は、日頃から舞台をよく観る50〜60代の中流階級の白人女性だったそう。2年と数ヶ月というほどほどの期間でクローズしており、日本で再演が繰り返される作品になるかどうかはまだわかりませんが、とりあえず観ておいて損はないと思います。
面白がって眺めていればOK。主演の市村正親さんをはじめとするエンターテイニングなキャストに楽しませてもらうべし!