ブロードウェイの一部の演目では、公演の当日にラッシュチケット(rush tickets)と呼ばれる格安チケットが40ドル程度で販売されます。ラッシュチケットは、ブロードウェイミュージカルを最安値に近い価格で観ることができる大変魅力的なチケットですが、時期や演目によっては狙っている人がとても多く、事前の情報収集が大切です。また、「本当に買えるの?」「席はどうなの?」など、いろいろな疑問が湧きますよね・・。このページでは、購入方法だけでなく、それらの疑問にもお答えしていきたいと思います。
注意:公演によって異なる場合がありますので、詳細は各公演の公式サイトでご確認ください。
販売場所 | 劇場窓口 |
販売開始時間 | 当日の劇場窓口が開く時間 |
販売方式 | 先着順 |
販売価格 | 30〜40ドル程度 |
購入可能枚数 | 通常1人2枚まで |
購入資格 | 誰でも購入できるもの(General Rush)と学生証の提示が必要なもの(Student Rush)がある |
ラッシュチケットは、金銭的余裕のない演劇ファンのために劇場・プロデューサーが特別に用意しているチケットなので、座席は劇場に任せることになります。購入するときに座席を聞くと教えてもらえる場合もありますが、基本的に選ばせてもらえることはありません。
公式サイトのラッシュチケット情報でよく出てくるキーワードは以下の3つです。
- determined at the discretion of the box office(劇場の裁量で決定する)
- may be partial view(見切れ席の可能性あり)
- subject to availability(残席状況による)
つまり、座席が選択できず、上演中に舞台の一部が見えづらい「パーシャル・ビュー (partial view)」 と呼ばれる席になる可能性があるため、座席位置にこだわりのある人には向きません。
ラッシュ席に実際にどのような席が割り当てられるかというと、全体的な傾向としては以下のような座席だったという話をよく聞きます。
- 1階席前方の極端なサイド席(角度的に見づらく、舞台が高ければさらに見づらい)
- 1階席後方(頭上の2階席が邪魔になる場合あり)
- 2階席、3階席の後方(舞台から遠い)
- ボックス席(角度的に見づらい)
公演によって、毎回同じような席が割り当てられる場合(ボックス席をラッシュ席として固定するような場合)と、その日の残席状況によって全く異なる席を割り当てられる場合があります。後者のような公演は、チケットが売れにくい公演回(月〜木曜日)のほうが良い席が回ってくることが多いです。
私自身もラッシュチケットを購入したことは何度もありますが、1階席前方のサイド席、1階席後方、2階席、ボックス席、いずれも割り当てられた経験があります。最前列の一番端やスピーカーが置いてあるボックス席に座ったこともあります。全く見切れない1階席の後方や2階席前方などをもらったことも何回かありますが、経験上、実際に座ってみて、他の座席と同じ値段では「売りにくい」または「売れにくい」要素のある席であることが圧倒的に多かったです。
「一番端でも前方席ならいいじゃん!」と思われるかもしれませんが、ブロードウェイには歴史ある劇場が多く、日本の最近建てられた劇場のように全席からの見やすさが考慮されていない場合が多いです。見切れ度合いは劇場や作品によってかなり変わりますが、こちらのような残念な経験をすることもありますので、覚悟はしておいたほうがよいと思います。
特にここ数年の傾向では、ハイシーズンの人気作に関しては、見づらい座席しかラッシュに回らないことが多いです。多いのは極端なサイド席。色々な人の話を聞いていても、ストレスなく観ることができる席は、tktsなどの割引ルートに半額で出しても売り切れないくらい余裕があるときに場合に時々いただける感じです。
ラッシュチケットは当日に売り出されますが、当日に残っているすべてのチケットがラッシュチケットとして販売されるわけではありません。
販売枚数は公表されないのが普通で、その時の事情によって変動します。残席状況によってはほんの数枚しか販売されない場合もあります。良心的な劇場だと、劇場窓口が開く前に中の人が出てきて、「今日は5枚しかないから、ここより後に並んでいる人たちは残念だけど買えないよ」と教えてくれる場合もありますが、窓口が開くまで買えるのか買えないのかわからないことも多いです。
ラッシュチケットの競争率は複数の要素によって左右されます。以下に当てはまる場合は、かなり本腰を入れて並ばないと購入できない可能性があります。
- 公演そのものの人気:評判の良い新作やトニー賞受賞後のような話題沸騰中の公演では、早朝あるいは前日の夜からラッシュチケットの列ができる場合もあります。ただし、ラッシュチケットを販売しているすべての公演が人気公演というわけでもありません。公演によっては、窓口が開く1〜2時間前から並んでも買える場合もあります。
- 公演日の人気:土日や夏休み・ホリデーシーズンの公演回は、通常よりも競争率が高くなる傾向にあります。公演によっては、月〜木曜日の公演回のみラッシュチケットの販売を行っていることもあります。
私自身は、早朝から並んで買ったこともあれば、開演2時間前に買ったこともあります。ただし、開演2時間前に買ったときは、劇場の半分以上が空席の公演でした。人気公演では朝7時くらいには並んでいる人が多いですし、ラッシュ以外のチケットが完売の公演では4時くらいから並ぶ人もいます。本当に本気の人は前夜から並びます。
一昔前であれば、もう少し気軽に「チャレンジしてみてもいいんじゃない?」といえるラッシュチケットでしたが、ブロードウェイのチケット事情は大きく変わってきているため、人気公演に関しては予算があるなら普通のチケットを買った方が無難だと思っています。特に、旅行で訪問中の人には時間的にも体力的にもオススメできる選択肢ではありません。開演までホテルに戻って寝るくらいのつもりでいないと、時差ボケと疲れが溜まって上演中に寝てしまいます。それでも「ラッシュを」ということであれば、万全の体制でチャレンジすることをおすすめします。