ブロードウェイの一部の演目では、格安チケットが抽選で販売されます。受付期間内にエントリーして当選した場合のみ購入することが可能です。必ず買えるという保証はありませんが、チケット購入の選択肢やチャンスを広げるためにエントリーしてみることをおすすめします。エントリーの注意事項やちょっとしたポイントも紹介していますので参考にしてみてください。
なお、ここで紹介する抽選チケットは、日本のプレイガイドなどで一般発売に先駆けて行われる「先行抽選販売」とは異なり、公演の数日前〜当日に行われるものです。
劇場前 | デジタル | |
申込場所 | 劇場前 | オンライン(一部はスマートフォンアプリ内で実施) |
申込受付日 | 当日 | 数日前〜当日が多いが要確認 |
販売方式 | 抽選 | 抽選 |
申込可能枚数 | 通常1人2枚まで | 通常1人2枚まで |
申込資格 | なし | スマートフォンアプリが必要な場合や、当選時の支払いがクレジットカード払いのみの場合がある |
一昔前までは、劇場に出向いた人だけが参加できる劇場前抽選(In-Person Lottery)のみでしたが、近年はオンラインで行われるデジタル抽選(Digital Lottery)を導入する作品が多くなってきています。
競争率は公演の人気などにもよって異なるため一概には言えません。完売しているような公演にはものすごい人数がエントリーするため、当選確率が限りなくゼロに近い場合もあります。なお、座席に余裕のある公演のほうが当選しやすい傾向はありますが、当日の残席すべてを抽選で販売しているわけではないため注意しましょう。
抽選用のチケットの枚数と座席位置は決まっている場合と決まっていない場合があります。最前列を抽選で販売するという方針の公演もあれば、当日の残席状況によって決める公演もあります。座席番号はチケットを受け取るまでわかりません。また、舞台の一部の視界が遮られる「パーシャルビュー(partial view)」という座席になる場合もあります。
参加は無料ですし、外れてもペナルティはありませんので、外れたときのバックアップ策を用意した上でチャレンジしてみてください。座席に余裕がある公演などでは落選者にも割引チケットを販売する場合があります。
この先では、エントリーの注意事項やちょっとしたポイントなどをデジタル抽選と劇場前抽選に分けて説明していきます。
デジタル抽選は英語では「デジタル・ロッタリー(digital lottery)」または「オンライン・ロッタリー(online lottery)」。その名前のとおりネットで参加できる抽選です。インターネット環境さえあれば誰でも手軽に参加できますが、その分、たくさんの人が申し込みます。
デジタル抽選で注意したいのが、エントリー、当落確認、支払い、受取りなどを決まった時間内に行う必要があるという点。特に支払い期限が非常に短く、当選の連絡から1時間以内に支払わなければならない場合が多いです。観光に夢中になっていたり、他のミュージカルを観ている間に有効期限が過ぎてしまったということがないように注意が必要です。
デジタル抽選のシステムは、作品によりさまざまです。通常のウェブサイトではなく、スマートフォンアプリ内で実施される場合もあります。ウェブサイトやアプリはすべて英語なので、多少の英語力が必要ですが、押さえるべきポイントは決まっていますので、以下に記載する内容を理解するようにしましょう。
- 申込み期間(公演回ごとに申込み期間が異なる。数日前〜当日が多いが要確認)
- 申込み可能枚数(1人2枚まで申込みが可能な場合が多い)
- 当落の発表時間
- 当落の連絡方法(メールで連絡が来るのか、所定の場所から自分で確認するのか、当選者のみに連絡が来るのかなど)
- 当選した場合の支払い期限(支払期限までに購入手続きを完了しないと権利放棄とみなされるので要注意)
- チケット受取り時に必要なもの(基本的に当選者本人が受け取る必要あり。身分証明書の提示が必要である場合がほとんど)
なお、申込みは1人1口が基本ですが、作品によっては、SNSをやっていると口数を2倍にしてもらえる場合もあります。また、公演によっては、残席に余裕があると落選者に割引チケットの案内が送付される場合もあります。落選の連絡も最後まで目を通してみましょう。落選者用の割引チケットは先着順です。
この抽選方式は、便宜上「劇場前抽選」と紹介していますが、英語では “In-Person Lottery” (イン・パーソン・ロッタリー)と呼ばれ、「対面で行う抽選」という意味があります。
劇場に出向くという労力がかかり、エントリーと抽選の時間が開演の2時間〜2時間半前と中途半端なので、時間に余裕がある人向けです。
劇場前抽選では、指定された時間内に劇場前に行くと抽選用紙がもらえるので、必要事項を書いて抽選箱の中に入れます。抽選時間になると、抽選箱の中から紙が引かれます。もし自分の名前が書いてある紙が引かれればチケットを購入できます。
劇場前抽選も、申込みは1人1口で、当選した場合に購入できる枚数は2枚までの場合が多いです。1人で挑戦する人が少しでも当選確率を上げたい場合は、その場に同じように1人でエントリーしようとしている人がいないか探してみましょう。そのような人とペアを組んでエントリーすれば、ほんの少しですが当選確率が上がります。なお、劇場抽選にはちょっとした狙い目というのがあります。詳しくはこちらの記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
ブロードウェイ全体の傾向として、現在は劇場前抽選よりもデジタル抽選が主流になっています。しかし、『ウィキッド』(Wicked)と『ザ・ブック・オブ・モルモン』(The Book of Mormon)のようなロングラン作が劇場前抽選をやっていたり、『アイランド』(Once On This Island)のように最近開幕した作品がオンライン抽選ではなく劇場前抽選を実施しているケースもあります。(2018年6月10日調べ)
一喜一憂しながらたくさんのミュージカルファンと抽選を見守るのはなかなか楽しい経験です。興味がある人は、「外れたら通常チケットか割引チケットを買う」というバックアップ作を用意した上で、覗きに行ってみるといいと思います。
当たることはあります。私も回数は少ないですが当たったことがあります。しかし、ほとんどの場合で外れています。完売作から空席多数の演目まで幅広くエントリーしていますが、勝率は5〜10%以下です。複数の要因(作品の売れ行き、季節、劇場マネージャーの方針など)と運が重なると、ときどき当たることがあるという感じです。
というわけで、時間の限られた観光客の方がこの抽選チケットだけに賭けるのはオススメできませんが、外れたら諦める、または通常の割引ルートや定価で買える演目を買うという覚悟のある人はトライしてみる価値があると思います。