多くの人の予想を裏切ってトニー賞リバイバル作品賞を受賞した『アイランド』。この作品でよくあるのが「どこに座ればいいですか?」という質問。『アイランド』を上演しているサークル・イン・ザ・スクエア劇場は、その名の通り円形劇場で、中央にあるステージを360度から座席が囲んでいます。座席票はこんな感じ。見切れの心配はない作品ですが、「何がどこにあるの?」「出演者はどこを向いてやるの?」という疑問がわくと思います。
この作品を決してベストとはいえない座席から観た経験と、他の人の意見も参考にしながら、座席選びのヒントをまとめました。これから観る方のお役に立てば幸いです。
まず、『アイランド』リバイバル版はイマーシブ系(イマーシブの詳細はこちらを参照)の作品であるため、一度だけ観るなら後方より前方のほうが楽しめると思います。最前列であれば足元は砂です。
次に難しいのが角度。一度だけ観るという前提で最もオススメできるのは、200番台の偶数側のブロックか100番台ブロック。とはいっても、細かい好みにもよると思うので、以下に各ブロックの特徴を挙げておきます。
座席表でいう下側の2つのブロック。円形劇場であることを考慮した演出になっていますが、強いて言えば、このブロックからの眺めがいわゆる「正面からの眺め」になると思います。正面を感じないシーンやさほど重要でないシーンが多いですが、やはり一部のシーンではメインの動きに正面らしい方向が存在し、その多くが100番台側から見やすいように作られています。
例えば、ベッドは400番台の側に頭、100番台の側に足がくる向きで置かれます。また、影絵のシーンで影が一番綺麗に見える場所がこの100番台ブロックになります。
また、この作品の見どころの一つである水は100番台ブロック側にあるので、島の雰囲気がより感じられるのではないかと思います。
座席表でいう左側のブロック。座席表を見た方ならお気づきだと思いますが、このブロックにだけ客席を斜めに横切る通路があります。この斜め通路はやや曲者なので、「キャストが近くに来るかも!」と飛びつきたくなる席かもしれませんが、少し注意が必要なブロック。(私は座席おまかせのチケットで、この斜め通路の後ろに座りました。)
この斜め通路を上った先にキャストが出入りする場所の一つがあり、この出入り口と通路を最もよく使うのが愛の神様、エルズリーです。特に前半はこの辺りが彼女の定位置になります。通るというレベルではなく、あの辺りに頻繁に居座ってコーラスします。2018年6月24日までエルズーリ役を演じているのはレア・サロンガ。生声が聞こえる贅沢な席です。
しかし、エルズリーは基本的に中央を向くので、斜め通路の後ろだと見えるのは基本的に背中になります。斜め通路の前や、このブロックの100番台ブロック寄りに座った場合も、中央で起きているメインのアクトを見ようと思うとエルズリーやこの通路で起こっていることは視界に入りにくくなります。キャストの近くに居るよりも表情が見たいという方は、次に紹介する向かいの200番台偶数席へ行ってください。
ただし、この通路を使った演出を間近で「感じる」ことができるのはこの辺りの座席の最大のメリット。驚いたり「わーぉ」と思った瞬間もあったことは付け加えておきます。
座席表でいう右側のブロック。一見、スタンダードで面白みがなさそうなブロックですが、反対側の200番台奇数ブロックの通路にいるキャストの演技や表情が見やすいブロック。また、100番台ブロックと比べると列数が少なく、後方でも中央のステージから極端に遠くなる感じがしない点もよいです。私が知る限り、この側が気に入らなかったという人は聞いたことがなく、安心して座れる人気ブロックです。
座席表でいう上側の小さいブロック。そもそも座席数が圧倒的に少ない貴重な400番台ブロック。すでに述べたとおり、いくつかのシーンでは、この400番台ブロックは「後ろ側からの眺め」という感じがすると思います。
しかし、この超ユニークなリバイバル作『アイランド』にただの「後ろ側」だけで終わる席があって良いわけがありません。この席でしか味わえない楽しみというのがちゃんと用意されています。
私は400番台には座っていませんが、このシーンのカラクリがすべて見える席にちょうど座っていたので以下に種明かしを。
とにかく発想が自由で面白い『アイランド』ですが、このたった一つのシーンだけでも完全にやられた感がありました。
また、100番台側にある水が遠いけれどよく見える方向でもあります。
いろいろ書きましたが、ブロードウェイの一般的な劇場に比べたら、サークル・イン・ザ・スクエア劇場はどの席も舞台に近くて観やすい部類に入ると思うので、極度に心配する必要はないと思います。私のように「もしかしてちょっとイマイチ?」と思う席に当たってしまっても、「この席でよかった!!」と思う瞬間がありました。
予算や残席状況が許す場合は、じっくり検討してみてください。