『ハミルトン』ブロードウェイ公演が、1月31日より抽選チケットの販売枚数を2倍に増やすという発表がありました。抽選チケットは通常30〜40ドルの場合が多いのですが、『ハミルトン』においては、ハミルトンが10ドル札の肖像であることにちなんで10ドルで販売されています。そんな夢のような抽選チケットを手にする人の数が2倍になったことに対し、まずは喜ぶべきでしょう。でも、『ハミルトン』を観たい人は山ほどいるというのが現実です。抽選申込みサイトの「よくある質問」によると、平均すると1日1万人以上からの申込みがあるとのこと。
現在はオリジナルプリンシパルキャストが去ったこともあり、幾分落ち着いてきたようですが、歴史的ヒット作といわれる『ハミルトン』のチケット争奪戦は、開幕当初からそれだけで話題に満ちていました。チケットは何ヶ月も先まで完売しており、直近のチケットを入手しようと思ったら基本的に選択肢は4つ。
- リセール(resale)に出ているものを買う
- SRO(立見)チケットを買う
- キャンセルチケットを買う
- 抽選チケットを当てる
もっとも手軽なのは1つ目のリセールチケットですが、リセール価格は2階席の後方座席でも500ドル超が当たり前です。「そんなの買えない!」という人は2つ目と3つ目を狙います。しかし、オリジナルキャストが出演していた頃は、キャンセルチケットとSROチケットを求める人の列ができはじめる時間が日に日に早くなっていき、毛布や椅子どころかテントを持ってきて並ぶ人が出てきて、一時は日曜日のキャンセル待ち列が土曜日の昼間からできてしまうほど白熱しました。普通の人が普通に並べる領域を越えていたため、列に代わりに並んでくれる「ラインシッター」というサービスが大繁盛し、ラインシッター代を何百ドルも支払えば、結局リセールチケットと同じくらいかそれ以上の価格になってしまいます。劇場側は、窓口に並んでいる人の安全や近所迷惑などの理由から、テントを禁止するなど度重なるルール変更を行いました。
また、劇場側は正規のプレミアム席の価格を800ドル超まで引き上げるという行動にも出ました。これにはさすがにファンや業界から驚きの声が上がりましたが、『ハミルトン』の場合はある意味それが適正価格だったといえます。リセールで800ドルで売れるのですから、最初からその値段で売っても売れるのです。
転売にかけれられそうな良席は高値で売る傍ら、10ドルの抽選チケットを増やす・・。抽選チケットは申し込んだ本人以外は購入できないため転売にかけられる心配がなく、確実にファンの手に渡るチケットとです。普通のヒットではないが故に、チケットの販売方法も一筋縄ではいかない『ハミルトン』の苦労が見えます・・。