ブロードウェイの『アラジン』(Aladdin)に大きな転機がやってきました。2017年2月中にアラジン役のアダム・ジェイコブスが同作のアメリカ国内ツアーへ、ジーニー役のジェームズ・モンロー・アイグルハートが『ハミルトン』(Hamilton)へと異動します。どちらも大好きなキャストだったので残念ですが、あれだけハードな役を開幕から3年も連投したことに対して、まずは「お疲れさまでした」と言うべきですね。
ブロードウェイの『アラジン』は、2014年3月の正式オープン以来、アラジン、ジャスミン、ジーニー、ジャファーを含むほとんどのプリンシパルキャストが演じ続け、抜群の安定感で走り続けてきた作品です。もうすぐ開幕3周年を迎えようとしている作品にこれだけ多くのオリジナルのプリンシパルキャストが揃って出演し続けているというのは、そうそうあることではありません。しかも、その中にはトニー賞助演男優賞を受賞したジーニー役のジェームズ・モンロー・アイグルハートも含まれます。トニー賞ノミネート/受賞俳優がこんなにも長くその役で出演し続けるというのも珍しい話です。
例えば、直近の2015-2016年シーズンに大ヒットした『ハミルトン』(Hamilton)のオリジナルプリンシパルキャストは、ブロードウェイ開幕から1年半が経たないうちに誰ひとりとしていなくなりました。注目されて次のオファーを受けた、しばらく家族を大事にしたい、など理由はさまざまだったと思います。また、プロデューサー側もどちらかというと長期の続投よりも適度な交替でやっていきたいように見えました。
同じく2015-2016年シーズンに開幕した『ブライトスター』(Bright Star)や『シャッフル・アロング』(Shuffle Along, or, the Making of the Musical Sensation of 1921 and All That Followed)、『シー・ラブズ・ミー』(She Loves Me)は、作品自体がもう上演されていないので、続投する場がありません。これらの作品からトニー賞にノミネートされた俳優が何人かいましたが、ノミネート俳優をノミネート作で観ることができた人は、限られていたと思います。
ブロードウェイ版『アラジン』のオリジナルプリンシパルキャストの続投は、
- ロングラン
- プロデューサーの意向
- 本人の意思
というすべての条件が揃って可能だったといえます。
数年に一度しかブロードウェイに行けないけれどオリジナルキャストを観たい、トニー賞受賞(またはノミネート)俳優をその作品で観たい、という人も多いはず・・。
アダムとジェームズの異動が発表されて、そのチャンスがこんなにも長く続いたのはかなりの奇跡だったということを改めて感じています。
注意:ブロードウェイには「アンダースタディー」や「スウィング」と呼ばれるシステムがあり、必要なときには本役の俳優が休める仕組みになっています。1日も休演せずに出演し続けているわけではありません。